地域共創型ふるさと納税事業

昨年、何かと話題になったふるさと納税ですが、令和元年度の全国の寄附総額合計は前年度比約0.95倍の4,875億円に上り、過去7年連続で初めて減少に転じました。

[出典:令和2年実施ふるさと納税に関する現況調査結果【総務省】より]

令和元年6月には返礼品率や返礼品の内容が更新され、改めて一定の明確なルールのもとに、より”健全化”した制度として再スタートしたふるさと納税。制度に反し数百億の寄附を集めていた特定自治体は、税優遇を受けられなくなるなど、国の厳しい対応も話題となりました。昨年度、寄附総額合計が微減した要因のひとつに、この特定の数自治体が外れた影響があったと推察されます。
しかしながら、このコロナ禍において、ふるさと納税の価値はより高まってくると考えられます。なぜなら寄附者にとっては2,000円の手数料を払えば、実質無料で返礼品が入るお得な制度であることは間違いなく、また税収減が見込まれる市町村にとっては貴重な財源のひとつとなるからです。
(参考情報;SankeiBizより

ふるさと納税の「運用」は一大事業

新たなルール下では、改めてどんな返礼品を用意するかや、PR施策をどうすべきかなど、様々な工夫が必要になってくるのですが、実はもう一つ大切なポイントがあります。

それは、各自治体が「どういう体制でこの事業を運用するか」という点です。

多くの自治体は、ふるさと納税の「運用業務」を、外部の民間事業者に委託しています。

それは「ふるさとチョイス」や「楽天」「さとふる」などのことかと思う人も多いかもしれませんが、それらは「ふるさと納税ポータルサイト」という位置づけのもので、”納税”する人がアクセスして関連情報を閲覧し、返礼品を選ぶ場所(ホームページ)として確立しています。このポータルサイトは、自治体としては利用しないわけにはいきません。(※自前のホームページを作っている地域も多いですが、あくまで情報発信の一貫で、そこから納税される金額は一般的には微々たるものです。)

それとは別に、一般の通販サイトと同じように、いわゆる受注処理や、納付書類等の事務手続き、商品開発や、掲載情報の企画・取材・撮影、各種ポータルへの掲載、ユーザーの分析や改善施策の立案など、様々な「運用業務」が発生します。これはもちろん、一定以上の専門性も求められ、何千、何万という申し込みになることもあるため、自治体の担当者だけで行うのは、一般的には困難だといえます。そのため、一定の委託内容で手数料を定め、専門事業者に委託する場合が多いのです。
もちろん、全ての自治体がそうしているわけではなく、中には自治体内に専門チームを組織し、スタッフや担当を直接雇って、一大通販サイト運営部署のような組織体制で注力している自治体ろもあります。そういう自治体は、やはり相当な寄附額をあげていますが、そこまでやれている地域は稀です。

一方で、自治体からの外注先として「ふるさと納税の運営業務事業」を受けている大手の事業者もあります。その多くは実は在京の大企業です。もちろん、業務のノウハウもあり、しっかりした体制で安心感もあるので、自治体からするとそういう選択肢を取るのは、自然な流れでもあります。

本当に「地元」ではできないのか?

自治体が、その「運用」をそうした外部の大手事業者に委託するのには、もう一つ理由があります。それは、その手の専門性や、ノウハウがある事業者が地元ではなかなか探せないということです。 前述の通り、そうしたノウハウを持つ事業者は、確かに都市部に集中しているように思われます。

しかし、本当にその業務は、地元では「全く」できないのでしょうか?

冷静に考えると、実はそうでもないことがわかってきます。
例えば商品の発送依頼や、受注管理、関連書類の手続きなどは、いわゆる「事務作業」です。
パソコンでそれ用の業務システムを使うリテラシーさえあれば、もちろん地元の人材でもできるでしょう。
商品の魅力を引き出す写真や記事作成は一定以上の経験があったほうがもちろん良いと思いますが、そういうスキルを身に着けたい人材がいれば、チームに入って一緒にやりながら学べる可能性もあります。
まして、地域の事業者に商品を出すよう勧誘したり、新しい商品を一緒に考えるのは、むしろ地元の仲間同士でやったほうがうまくいく可能性も大いにあります。これは当然、地元に雇用を生むことにも繋がります。通販サイトの運用経験が地元でも身につけられるのは、地元にとっても実はかなり大きなメリットなのです。

そうした「ふるさと納税運用チーム」を、地元の人材を巻き込みながら作れないか。それが、私達の「地域共創型ふるさと納税運用事業」のそもそもの発想でした。
ただ最初から地元の人材だけで全てをやるのは困難な部分もあるかもしれません。
そこで、私達がこれまで各地で地域メディアを運用してきたノウハウと、各地域でライターチームを作ってきた経験が活かせるのではないかと考えました。

2018年11月、私達が広島県の大崎上島町で始めたこの事業(参照リリース情報)は、地元の観光協会とタッグを組んで実現しました。地元の皆さんのネットワークを生かし、一丸となって取り組むことで、想像以上に多くの寄附額を集めることができました。また、その成果を聞きつけて、新たに参加したいという事業者も増えているとうかがっています。
大崎上島町の2018年度の寄附総額は、前年度比約1.5倍にまで伸び、非常にいいスタートを切ることができました。2年目となる2019年度も昨年度比で約1.6倍、このコロナ禍においても寄付額は増え続けています。
また私達は、2019年4月から広島県福山市でも、同様の主旨でふるさと納税運用事業をスタートしており、実績として前年度比約1.8倍、2021年4-6月累計では4倍以上の寄附額増となっています。
各地域の皆さんと一緒に、更に大きく発展させていければと考えています。

ふるさと納税制度の「本質」に立ち戻る

ふるさと納税制度は、出身地以外の地域を自由に応援でき、自治体はそれをきっかけに知られていない地域の魅力を伝えることができるという、今までにないユニークな制度として始まりました。もちろん、返礼品の”お得感”がきっかけになって、ここまでの一大市場になり、やり方次第で想像以上に効果を得る事ができるようになったとも言えます。その本質をしっかり捉えてうまく使えば、地域の事業者にとっても、大きなメリットが得られることには違いありません。またその寄附は、額面以上に自主財源として使い手のあるもの。まさに一石二鳥、三鳥です。制度としての賛否はもちろんあるとは思います。ただ課題が山積する地方自治体にとっては、大いに利用し甲斐があるのもまた事実です。

2018年に、事業構想と「さとふる」が共同で行った調査(参考レポート)によると、ふるさと納税がきっかけで、返礼品となっている商品を一般の販売ルートで再購入した経験のある人が約26%、寄附した地域を訪れたことがあると答えた人が約38%と、いずれも非常に高い数字をあげていました。これらは、この制度が地域のPRという本来の目的で大きな効果をあげられる可能性があるということを示しています。

そうであるからこそ、なおさら「できることは地元でやる」意義が非常に強いと私達は考えるのです。

どの地域も、本音としては「自分たちでなんとかしたい」と思っています。一方で、新しい取り組みやノウハウは、最初から地元だけでというのも簡単ではないのも事実。この矛盾を少しでも解消できる方法が提供できるなら、非常に意義のあることではないかと考えています。私達は、こうした取り組みを、特に瀬戸内地域を中心に広げていきたいと考えています。

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