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地元の特産品を地元の小売業者が売る戦略の功。3年目で売上1億円を突破した事業創造
沖縄県

地元の特産品を地元の小売業者が売る戦略の功。3年目で売上1億円を突破した事業創造
離島のいいもの沖縄セレクション 株式会社たしざん

離島のいいもの沖縄セレクション

沖縄の島々で生産され、地元のリテーラー 沖縄ファミリーマート(リウボウグループ)が取り扱う食材や加工品の商品群。手作りの味をビン詰にした「特産離島便」(一部店舗にて限定販売)や、ブランド牛やマグロ、車えびなどのプレミアム食材などを箱詰めにした「島別離島便」、「離島カレー」などで構成。2015年に本格始動し、総売り上げは3年目で1億円を突破。

記事のポイント

  • クリエイティブエージェンシーが商社機能を担う
  • パッケージングの妙で不安定な生産体制を補完
  • 地元の小売業者と交渉・協業し、売場と商流を確保

沖縄ファミリーマート那覇空港ターミナル店で、内容量80mlの小さなビンに入った 1個740〜880円のビン詰が飛ぶように売れている。ドイツの家庭で使われるガラス製の保存容器WECKに密閉包装された20種類ほどの食品は、すべて離島で手づくりされたものだ。イラブー佃煮やアーサ塩、シークヮーサーこしょうなど沖縄ならではのラインナップとデザイン性の高さが受け、那覇空港ターミナル店だけで年間13,000個(2017年度実績)を売る。

沖縄県那覇空港店売り場

沖縄ファミリーマートには新たな人気商品、離島の生産者には新たな販路や収入源に生きがい、生活者には沖縄らしいお土産や食卓をアップデートする食材。バリューチェーン全体に恩恵をもたらす事業創造はどのようにして成功したのか。要因は、生産から小売までを見通した商品設計とひとつひとつ課題を乗り越えていったプロセスにある。全体プロデュースを手がけた株式会社たしざん 棚橋智恵さんにお話をうかがった。

「小さなビンなら、私にもできそう。」

株式会社たしざん 棚橋智恵さん

プロジェクトの始まりは、離島のお母さんの一言だった。WEBサイト・コンテンツ制作やSNS運用などを担うクリエイティブエージェンシーとして離島振興事業に携わり、沖縄の離島の人々とコミュニケーションを深める中で、「小さなビンなら、私にもできそう。」と特産品開発への意欲が覗いたのだ。

離島の特産品開発は、ハンデだらけだ。まず人手不足。原料となる農海産物の生産も安定しているとはいえない。原料の一部やプロダクトは船で運ばなければならず、台風や冬場の北風で欠航すれば、生産も出荷も滞る。また、各離島に加工場はあるが、できあがった食品をレトルトパックや真空パックする設備は高額で投資が難しいため、長期間常温で保存でき、長距離輸送に耐えうる商品づくりは困難だ。これらの複合的な要因により、安定供給ができないため、既存の流通に乗せにくい。だからといって、販路を島内のお土産物屋さんに絞ると、成長は望めない。

「離島にある素材でつくれて、島のお母さん・お父さんたちがやる気になってくれて、レトルトや真空パックの設備がなくても長期間常温保存ができて。一島一島、ひとりひとりがつくれる量は少なくても、みんなで力を合わせることで、お店の棚にいつも商品がある状態をつくれるかたちを模索し始めました。」

いちばん簡単そうな保存食は、いちばん歴史ある保存食

「小さなビンなら」という最初の一言にヒントを得たプロジェクトチームは、「いちばん簡単そうな保存食は、いちばん歴史ある保存食」と発想し、世界の保存食文化に目を向けた。結果、イギリスにビン詰めのハーブソルトやハーブシュガーをつくる習慣があることを発見した。

見栄えがよく、保存性も高いドイツ伝統の容器が多くの生産者の心を動かした

「常温保存ができて見た目もよい“見せる保存食”。これは沖縄でも使える!と検討を進め、ドイツのお母さんたちに長年、愛されてきた保存食ビンWECKに辿りつきました。」

煮沸さえできれば、滅菌・密封・常温保存ができる。また、複数の離島で複数の生産者により少量生産される特産品をパッケージの統一により“面”で見せることで、欠品リスクを相互補完しながら「離島で手づくりされた特別な品々」という印象づけができる。

魅力的なパッケージは、生産者の発掘と商品ラインナップの充実にも寄与した。
「生活のあらゆる場面で人手が足りず、ひとりで何役もこなす離島のお母さん、お父さんたちはとても忙しいのですが、『島の自慢をビンに詰めてください』と、空のビンを手渡すと、次に島に行った時には何かつくっておいてくれました。」

品目が決まったあとは、「WECK COOKING」などの著書がある料理研究家の冷水希三子さんとともに島々を巡り、味の監修や料理指導をしてもらった。

沖縄ファミリーマートに直談判して棚を獲得

商品設計ができた段階で、たしざんは販路開拓に乗り出した。ターゲットは、県内最大のコンビニチェーン沖縄ファミリーマートだ。交渉を始めた当初の店舗数は、県内最大の250店舗(現在は321店、8月15日時点)。グループ会社には、百貨店デパートリウボウもある。

「観光客の方に買っていただきたい商品なので、観光動線に流通させることを考えました。空港をはじめ、主要観光スポットや離島、リゾートエリアにも店舗がある沖縄ファミリーマートさんが最適と見定め、何度もお願いしに行きました。」

沖縄ファミリーマートの店舗にとっては、安定供給と品質面にリスクがあった。
「ただ『置いてください』では通用しないので、CSRと位置づけ提案しました。棚に離島支援のスペースを確保していただくことで、離島の生産者に換金事業の機会をつくり、離島の産品の品質や生産力の向上に貢献しましょう、と。」

離島のものを扱えるのは沖縄ファミリーマート、という地位を確立することで、他のコンビニチェーンに対するブランド優位性が高まるというメリットもアピールし、離島産ビン詰商品専用の棚を獲得した。

その後、全国流通にかなう品質水準への意識を高めるため、沖縄ファミリーマートの商品開発担当者とともに離島の生産者をめぐった。菌検査や、原材料の一括表示、商品カルテと製造工程表の提出など、沖縄ファミリーマートの品質要求をクリアするための条件を整え、あわせて生産者には全員、PL保険に加入してもらった。

「面倒だ、と離れてしまった生産者さんもいらっしゃいましたが、残った方たちは、自分の商品をずっとつくり続けてくださっていて、『こんなのものあるよ』と新商品の提案もしてくださるまでになっています。」

このメディアは「地方創生」を「業界」として定着させ、そこで活躍する人を可視化し応援する為に生まれました。

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