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全国初「海女のまち条例」を制定。海女の”当たり前”を地域資源と定義し活用する
三重県

全国初「海女のまち条例」を制定。海女の"当たり前"を地域資源と定義し活用する
三重県鳥羽市 市長 中村欣一郎さん

鳥羽市は志摩半島に位置し、縄文時代の狩猟採集文化を色濃く残す日本の海女人口約2000人の4分の1ほどが暮らす地域です。海とともにあるこの地域においては、男性は船に乗って遠洋に出て、女性は海女として沿岸漁業に勤しむ家庭内分業が古くから行われています。世相が大きく様変わりした現在においても、そのライフスタイルは、女性の活躍や生涯現役といった文脈において注目すべき存在となっています。また、自然資源を保全しながら続いてきた持続可能な漁業のあり方は、SDGs(Sustainable Developement Goals:持続可能な開発目標 ※)の潮流にもマッチします。古くて新しい海女文化を独自の地域資源として位置づけ、漁業と観光業を連携させて新たな地域経済を創出しようとしている鳥羽市の中村欣一郎市長にお話を伺います。

三重県鳥羽市 中村欣一郎 市長

  • 統率(地域密着)72
    就任1期の2年目であり、現在のところは市長の考えや価値観を行政職員に浸透させていく考えである。職員が地域に出て行くために、市長自らが市内のランチマップを作って配布するところから始めている。地域に飛び出して、市民と一緒に課題を考えることを職員にも推奨している。
  • 武勇(行動突破力)92
    全国で先進的な取組みを吸収するために自ら足を運び、また地域内外の人々と積極的にコミュニケーションを取って交流することを好む。飼い犬とともにシーカヤックを楽しむ姿が市民にも親しまれ、メディアにも登場して自ら広告塔としても活動している。
  • 知略(ビジョン)75
    海女文化を中心とした独自資源に気づき始めているが、具体的なビジョンに落とし込むところまでには至っていない。海女の暮らしを複業・女性活躍・生涯現役等の現代のコンセプトに翻訳することを試みているが、今のところ言語明確化するまでには至っていない。
  • 政治(内政外交)82
    全国にも類をみない「海女のまち条例」を施行して、市民全体がまちづくりに参画する枠組みを整える。前職が県会議員という立場を活かし、県とのパイプも上手く活用しながら離島や各浦々にも目配せしつつ地域全体の底上げを目指す。

記事のポイント

  • 地域の価値に気付き、新しい仕事をつくった。海女のまちの着地型ツーリズム
  • 漁業者と観光事業者が手を取り合って手がけるボランティアツーリズムで”やりがい”を提供
  • 世界的に評価されている鳥羽商船高等専門学校の力を課題解決に生かす

「海女のまち」地域の独自資源に気づくプロセス

ー日本、いや世界中でもっとも海女の人口が集まっている鳥羽市の魅力を教えてください。

私たちの周辺には当たり前の存在として、海女さんはずっと以前から存在してました。海の博物館もあったりですね。よそとは違うんだなっていうなんとなくの感覚はありましたが、世界的にユネスコの文化遺産にしようというほどの価値があるということを意識し始めたのは、数年前からでした。

もちろん、漁業資源をもたらす豊かな海と自然環境が大前提にあるのですが、海女さんのライフスタイル自体が結構象徴的な存在だと考えています。海女さんというと、海女漁だけで食っているような印象がありますが、それは季節や家庭にも拠りますけど、地域での普通の仕事と家の手伝いと併せた複数の仕事を掛け持ちしながらやってきたものです。

今でこそ働き方改革だと言われていますが、海女さんこそが複業であり女性活躍、そして生涯現役のロールモデルとして、古いけれども一周回って新しい価値観を体現する存在なのではないかと、最近気づきました。

ー海女さんという存在自体の価値を見直すと同時に、エリアとしての価値にも気づいたということでしょうか。

海女さんは資源管理型漁業の典型で、魚介類を採り過ぎない採集生活をそれこそ縄文時代から脈々と受け継いでいます。1日に2回、1時間程度しか潜らない、それぞれの縄張りを決める、漁場を把握して一番大きく食べ頃な大きさのものだけを採ってくるといった、漁業の持続可能性を高める取組みが現代に合っていると感じます。ユネスコの文化遺産といった話は後からついてきたもので、海の環境を守りながら生業(なりわい)として漁業を守っていくのが当たり前の地域なんです。

今では大学の研究者や海外観光客からも注目してもらえる状況になってきて、鳥羽をフィールドとした研究や、漁業と観光の連携といった取組みに繋がってきています。ひと昔前のように、団体旅行が観光バスでやってきて、大広間で宴会して泊まって帰る、という時代ではなくなってきている中で、スタディツアーや長期滞在型の着地型ツーリズムといった昨今の潮流に対応できてきていると思います。決して全部狙っていたわけではありません。様々な繋がりが結びついた結果なのですが、海女さんという存在によっていろんな人々の心をくすぐるコンテンツが生まれています。

海女さんの万年日めくりカレンダーを見せてくれた中村市長

着地型観光としてのエコツーリズム開発の秘訣

ー民間の方々の頑張りというか、例えば女性たちを中心としたグループである海島遊民くらぶの皆さんが、着地型観光といった言葉が流布する前から頑張って体験型エコツアーを組まれてたりとか、離島では「島っ子ガイド」と名付けて小学生が自分たちの暮らしを紹介する交流プログラムをしておられます。これらは、どういった経緯で始まったのでしょうか。

エコツーリズムに関しては、約20年前、エコツーリズムという言い方をしていない頃から、海島遊民くらぶとか、島の旅社という会社が始めました。みんな口では言ってた。発想としてはそんな珍しい話でもなかったんですけども、海島遊民くらぶはそれを実現した。みんな言ってるばっかりだったんですけども、彼女たちは自分たちでやってみた実行力があったのですね。それがだんだん広がってきて、体験メニューも増えてきています。でも、それだけで食っていけるかっていうとなかなか料金的には厳しい値段かなと思います。

志摩にはアマネムのような高級リゾートができて、1日数万円出してガイドお願いしてまわる富裕層の方がみえるのに、鳥羽の場合はそんなにお金を取って良いのかな?みたいな感覚があります。地域の紹介をしてお金を取るのはずるいことしているようなイメージがあるんですね。でも海島遊民くらぶなどはメニュー開発にもチャレンジされて、あとは本当にお客さんさえその時間が埋まって来れば複業のひとつとして成立するんじゃないかと思います。

鳥羽駅すぐそば。海島遊民くらぶのインフォメーションセンター

初めてのことを始める行動力を持つ女性たち

ーお話を伺っていると、アイディアとしてはみんな持っているんだけども誰もしないことを実行してしまうアクションができるのは、どちらかというと女性なのかな、と感じます。背景には、女性が活躍する文化というか、女性が家庭のこともやりつつ、自分の仕事をするという当たり前があるのでしょうか。

それはあると思います。この前、ゴールデンウィークに海島遊民くらぶのカヤックツアーに参加してみました。自宅にも自由に乗れるカヤックがあるんですけど、海島遊民くらぶのカヤックがどんな仕組みで料金感覚はどんなもんかと思いまして。小浜に彼らの基地があって、三ツ島っていう島がホテルの前にあるんです。そこに渡るシーカヤック体験が1時間半で5,000円ほどです。地元の人からしたらすごく高いと思うんですけど、参加してみたら、手ぶらで来れて、シューズやウェア借りて、手を洗う水とか全部付いているので、鉄道や車で来る人には安いなと。自分もようやく理解ができました。

ー東京湾のシーカヤック体験だと、同じメニューで1万5000円くらい。とても安いと思います。

海島遊民くらぶがプログラムづくりを始めた時、そんなふうに観光客と一緒に漁村を歩いて、知り合いの漁師やおばちゃんたちに話しかけて、何をしているんだという風潮がありました。そんなことでお金取るなんて、みたいに思った人もいましたが、今思うとすごい最先端なことをやってたんだと思いますね。

ーそういったことに刺激を受けて、自分たちもやってみようという方々も出てきているのでしょうか。

海女小屋で海女さんが焼き物をしてお客様に食べてもらうのも、今でこそ一つの観光プログラムとして確立していますが、当初は考えもしなかったような商売でした。でも、先駆けとなったプログラムの様子を見て、お客さんはこういうことを喜ぶんだと発見したんじゃないかと思います。それぞれの集落に海女さんがいるので、同じことやろうと思えばできます。同じようでいて、それぞれの浦ごとに特徴があるので、それらを回るのも面白いです。まだまだ伸びしろはあります。

小学生が外国人観光客を案内する島っ子ガイド

ー菅島や神島といった離島で実施されている島っ子ガイドが注目されています。

企画したのは、海島遊民くらぶです。それと、たまたま島に赴任していた先生が熱心だったからできたのかと思います。島の人たちの理解を得るのも大変ですし、プログラムをつくるのにも時間がかかると思いますが、ちょうどそこにその先生がいたからできたという部分もあります。ガイドぶりを見ると、子どもたちは英語こそ流暢ではないものの海外からのお客さんも案内しています。そもそもあまり島外の人と接しない中で、そういう場が島にあり、外国人まで案内するような経験ができるということだけでも意味のあることかなと思います。

ー島っ子ガイドは観光よりも教育目的を優先されていると思うんですが、ガイドをした小学生が大きくなって、地元に残ろうとか愛着が醸成されているような傾向はあるのでしょうか。

実際に島の子どもたちに聞いたわけではないですが、自信になっていると思いますよ。菅島の島っ子ガイドは子どものガイドと思って聞きに行ったら全然レベルが低いわけではなく、内容はしっかりしたものでした。神島の方はまだ進化の途中ですけども、子どものガイドだからといって侮るなかれ、内容は濃いと思いますよ。島っ子ガイドが道徳の教科書に載ったのはご存知ですか?この春から、島っ子ガイドそのものがしっかりと一つの単元として数ページにわたって紹介されています。

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