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伝統工芸とネット動画、双方の価値を最大化する福岡発ベンチャー ニューワールドの挑戦
全国東京都

伝統工芸とネット動画、双方の価値を最大化する
福岡発ベンチャー ニューワールドの挑戦
ニューワールド株式会社

染織品、陶磁器、漆器、木工・竹工品、金工品――。代々受け継がれ、熟練した技でつくられる伝統工芸品。日本の高品質なモノ作り技術だが、インターネットでの販売が難しく、グローバル市場で勝負できていない課題がある。それを解決すべく、ブランディングとマーケティングを担うことで、世界に発信し広めようとしているのが、ニューワールド株式会社だ。各地の伝統工芸産地が直面している後継者問題にも一石を投じる可能性がある事業について、代表の井手康博氏にお話を伺った。

記事のポイント

  • 伝統工芸品の制作工程やこだわりを動画コンテンツにしてネットショップで公開
  • ネット販売をしながらも営業は工場まで出向く。直接足を運び取引先を増やしていった
  • 工芸品の産地へ世界中の人とお金を行き来させる仕組みづくりでモノづくりの衰退に歯止めをかける

モノづくり技術をブランド化するリーディングカンパニーへ

インターネットでのビジネスが難しい領域に動画コンテンツを組み合わせることで、新しい価値を創出できないか――。これがニューワールドの原点。世の中のあらゆる産業をテーブルに並べ、どれなら変化を起こせるか検討した結果、選んだのが、高いモノ作り技術を誇る日本の伝統工芸だった。

伝統工芸品は、消費者に価値や価格の意味を伝えるためにも、対面販売が多い。実際に手に取り、説明を聞くことで、購入につながるケースが多いからだ。

「たとえば、量産されている食器によく似た伝統工芸の食器があります。これをインターネット上で写真と文章のみで販売したのでは、なぜ価格に大きな違いがあるのか分かりません。でも、高い技術力を持つ職人が手作業で作った食器であることや、オンリーワンであることなどを動画で伝えれば、消費者に行動変容を起こせるのではないかと思いました。」と、代表の井手氏は語る。

代表取締役の井手康博氏

ニューワールドがベンチマークにしているのは、ファッション・ライフスタイル業界における世界最大の企業体LVMHやケリングだ。さまざまなブランドを買収し、ブランディングとマーケティングを担うことで、価格帯を下げることなくグローバルで販売している。同じように、日本のモノづくり技術をブランド化し、グローバルで販売するリーディングカンパニーを目指しているのだ。

「初めから海外を視野に動画や情報を発信することで、海外から人を呼び込み、一緒に商品企画をブラッシュアップすることで、世界に高い技術を流通させたいと考えています。」

この構想により、動画コンテンツを売りにする伝統工芸品のインターネットショップ「CRAFT STORE」が誕生した。

「事業を始めたのは2016年。伝統工芸の産地やメーカー、職人さんとのつながりはまったくなかったので、展示会に行って名刺を渡し、その1週間後には夜行バスで会いに行くという、モノづくりの現場を必ず見る営業活動を徹底しました。」井手氏は、創業パートナーと2人で、新潟や石川、福井、富山などを中心に、足しげく通ったと言う。

職人や商品の素晴らしさを、動画に込めて配信

事業開始から約2年が経ち、現在の取引社数は約80社。最初のきっかけとなったのは、電話でアポイントを取り飛び込んだ、富山県高岡市にある能作。高岡に400年以上続く鋳物技術をより高度にアレンジし、曲がる器などを製造するメーカーだ。

株式会社 能作

「まだ何も実績が無い状態でしたが、職人さんの仕事風景やこだわり、商品を使うことで変わるライフスタイル、それに高岡の景色を交えた約1分間の動画を作らせていただけないかと、僕らの思いをぶつけました。すると、意外にもすんなりOKをもらえたので、その翌週には動画を撮影しに行きました。」

作った動画はfacebookなどSNSと相性がよく、配信するうちに、同業界の人に見てもらえる機会が生まれた。さらに、動画を持って産地への営業活動を続けていくうちに、「能作さんのような動画をうちでもつくりたい」と、取引顧客は増えていったという。

「CRAFT STORE」のサイト上で完成までの裏話やこだわりを知れる(動画へ)

「僕らにできることは、工場に出向いて、職人さんや社長さんにお会いして対話を重ねることでした。能作さんの事例きっかけとなった上に、”若者が伝統工芸の産地に来て何かをやろうとしていること”に喜んで賛同してくださる方がとても多かったですね。40代50代の2代目、3代目の方々は、海外で売りたい、ネットをうまく活用したい、新しい商品を作りたいという課題を持っていて、そこに僕らの事業が課題解決策として合致したのだと思います。」

伝統工芸の業界では、これまでも展示会などのタイミングで動画を制作する機会はあった。しかし、制作会社から納品された動画を展示会で流す以外に、上手く活用できない課題を抱えていたそうだ。しかし、井手氏らが作る動画は「CRAFT STORE」のサイト内だけでなく、facebookなどSNSでも配信される。自分たちの技術や商品が多くの人に見てもらえることに、まず驚かれるそうだ。

「職人さんたちにとってモノ作りは日常なので、そもそもすごい技術だと思っていない人が多い印象があります。技術だけでなく、たとえば有田焼の産地には、旅行で陶芸体験をした海外の方が有田焼を気に入って、今では移住して修業しているんです。そういう各地にある素晴らしい事例も含めて動画にして世界に配信し、ブランディングしていきたいと思っています。」

良いモノを長く使う価値観を広めたい

商流の川上にいるメーカーや職人に「価値の可視化」という価値を提供する一方で、実際に商品を手に取る商流の川下の消費者に対しては「ていねいな暮らし」を提案している。本当に良いモノを長く使う価値観を広めていきたいと井手氏は言う。たとえば、高級な革の名刺入れなら、使えば使うほど味が出る。もし壊れたとしても愛着あるモノだから、捨てるのではなく修理して使いたいと思うだろうし、自分の子どもにも継承できるかもしれない。100年使えるブランドを広めていきたいのだ。

「購入いただいた方には、できるだけ電話でインタビューをしています。先日、もともと伝統工芸を買う予定は無かったけど、たまたま見たfacebookの動画が気になり、「CRAFT STORE」のサイトを見たという方に話を伺いました。ちょうど、上司にプレゼントをする機会があったので、試しにスズのタンブラーを2つ購入されたとのこと。すると届いた商品がとても良かったので、違うタイミングで他の商品も購入されていました。誰かが「CRAFT STORE」で贈り物をしたら、贈られた人も「CRAFT STORE」を知る機会を得ます。その体験が良ければ、その人も誰かに贈り物をするタイミングで「CRAFT STORE」を使ってくれるかもしれない。そういう体験の輪を作り、広げたいですね。」

そう語る井手氏らは、本当に良いモノ作りと商品を伝えるために、動画編集やサイトデザインなどのすべてを内製化している。福岡で出会い、東京に進出したメンバー7人で、職人のこだわりを聞いて、商品を見せてもらい、モノづくりの勉強をしながら事業を動かしているのだ。

伝統工芸品をグローバルブランドに

日本の伝統工芸は、全国各地で後継者不足が深刻な問題となり、このままでは衰退も懸念されている。しかし、ニューワールドの事業によって、その衰退は止められるかもしれない。

「日本の伝統工芸品が適正価格で世界に流通するようになり、産地で外国人の方も作っているような動画が広まれば、日本のモノづくりの衰退は止められると思っています。そのためにも、世界各国で伝統工芸品を流通させるためのマーケティングやブランディングを協業できるパートナー企業を探している最中です。すでに日本食は海外に進出しているので、食器などのキッチンツールを抱き合わせで進出させ、オフラインで体験したモノをオンラインで購入できるような仕組みも考えています。」

技術の継承が進んでいる比較的規模の大きい工場は良くても、70代80代の職人が現役でモノ作りをしている少人数の工場などでは、もし後継者が見つからなければ、その職人が持つ技術は消滅してしまう可能性がある。だからこそ、産地に世界中の人とお金が行き来する状態を作りたいと井手氏は語る。

「トランプ大統領が来日したとき、メラニア夫人に贈呈されたのが、富山県高岡市で作っている錫製のブレスレットでした。テレビで放映された直後、検索件数は一気に増え、「CRAFT STORE」で購入される方もたくさんいらっしゃいました。これは一過性に過ぎませんが、伝統工芸品は見せ方を変えるだけで、興味を持つ方の幅が広がる好例だと思います。そういうマーケティングに注力していきたいですね。」

日本の高いモノ作り技術である伝統工芸品を世界に広め、その確固たるブランドを確立させようとしているニューワールド。モノや情報が過多な現代だからこそ、本物志向を持つ世界中の人から支持される一大企業になる日は、そう遠くないかも知れない。

●ニューワールド株式会社 [Neworld,Inc.] 会社概要

  • 代表取締役 : 井手 康博
  • 所 在 地 : 東京都世田谷区桜新町2-16-13
  • 電 話 : 03-4405-3058
  • 設 立 : 2013年11月
  • 従業員数 : 7名
  • 資 本 金 : 2,700万円
  • コーポレートサイト
  • CRAFT STORE

取材・文:田村朋美

このメディアは「地方創生」を「業界」として定着させ、そこで活躍する人を可視化し応援する為に生まれました。

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