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空き物件×ホテルが街の魅力を醸す「THE SHARE HOTELS」の地域連携力
北海道東京都石川県京都府

空き物件×ホテルが街の魅力を醸す
「THE SHARE HOTELS」の地域連携力
株式会社リビタ

記事のポイント

  • 地方都市の中心市街地の空き物件をホテルにリノベーションする。
  • 街に開いたシェアスペースを設け、人の出会いやコミュニティという“登記”できない豊かさを生み出す。
  • コミュニティが街の財産となり、地域全体の豊かさを創造する場に育つ。

「THE SHARE HOTELS」は、「くらし、生活をリノベーションする」をコンセプトに既存建物の改修・再生を手がける株式会社リビタの新規事業。全国の中心市街地で空き物件をリノベーションし、ホテルを開発・運営するプロジェクトだ。これまでマンションやオフィスをリノベーションし、空間だけでなくそこで営まれる暮らしや人の集いもデザインしてきた同社が、地域に根ざしたホテル事業に乗り出した価値観と戦略について、ホテル事業部プロジェクトリーダーの北島優さんにお話を伺った。

株式会社リビタ

既存建物のリノベーション分譲事業、コンサルティング事業、サブリース事業、ホテル事業を通して、暮らしとコミュニティをデザインする会社。不動産業の枠を越え、ライフスタイルや価値観のアップデートを牽引する新たなニーズを発掘し続けている。

経済性をもったコミュニティスペースとしてのホテル

金沢の「HATCHi」と「KUMU」、清澄白河の「LYURO」、函館の「HakoBA」に京都の「RAKURO」とTHE SHARE HOTELSシリーズのホテルは2018年4月現在、全国5箇所で展開されている。屋号こそ異なっているものの、5箇所は一貫した価値観で開発・運営されている。

株式会社リビタ ホテル事業部 北島優氏

「ホテルという業態をとっていることは、あくまで目的ではなく方法です。弊社はこれまで、首都圏を中心に「SHARE PLACE」というシェア型賃貸住宅(シェアハウス)や「BUKATSUDO」という街のシェアスペース等を運営してきました。BUKATSUDOのように人々が集い交流するシェアスペースを、地方都市にも展開したいと考えたとき、『人の多い首都圏だからこそできる事業であり、地方だと採算が合わない』という問題があります。それを乗り越えるために、何か別の収益源や仕組みをつくる必要があると考え、ホテルという業態に行きつきました。よって事業モデルはホテルではありますが、その共用部を街に開かれたシェアスペースとしてとらえ、ソフトコンテンツを含めて運営しています。」

各地に展開するTHE SHARE HOTELSのホテルには、街に開かれた固有のシェアスペースがあり、街の人々が集う。その場所を通して、宿泊者は街の人や活動に触れることができるという。「もっとローカルな旅がしたい」、「あの場所のあの人に会ってみたい」といった旅人の新たなニーズに応えながら、もう一方でホテルの集客力によって地域のプレイヤーにメリットを提供することができる。これまでの事業で、リアルなつながりを求めるミレニアル世代のニーズをとらえてきたリビタならではの勝算があった。

あくまで手段としてのホテル事業。人の出会いやコミュニティという“登記”できない豊かさを重視する価値観は、客室や共用部の考えに如実に表れている。

HATCHi 客室

「リノベーションという手法を取ることで、新築するのと比べてコストを大幅に抑えることが可能となり、一般的に事業性が向上しますが、だからといってむやみに儲けを取るというよりは共用部の面積を広くとろうと考えます。さらにトイレやシャワーなどの水回りを共有にしたり立体構成にして、客室面積をコンパクトしながらも定員数をキープする工夫を凝らし、共用部の面積比率を高めていきます。そうしてできた広い共用部を街に開かれたシェアスペースとして地域の人々の利用を促したいと考えています。」

HATCHi リノベーション前

まさに「コミュニティスペースとしてのホテルを運営したい」と語るとおりの事業戦略だ。

「THE SHARE HOTELSには、人と人が出会うことの価値があります。旅行者どうしの出会いもあれば、地元の人とバーカウンターで知り合えることもあるし、さらに地域プレイヤーのイベントや活動に参加もできる。通常ホテルはハードが古くなって価値は目減りするけれど、人が集うコミュニティ価値はホテルの価値となり街の財産となって残ります。」

HATCHi ダイニングバー

街に開いた広い共用部に地元の人が出店できる屋台カートやポップアップスペースをはじめ、飲食店も備えた「敷居の低いホテル」をつくり、さまざまなイベントを開く。すると、場としての魅力が高まり、エリア内での差別化ポイント、競争力となって、中長期的にみて収益にも跳ね返ってくるという。

HATCHi 街に開いたエントランス

コミュニティづくりの身体感覚

ここまでの内容を読んで、計画中のホテルの建築パースにCGで旅人や地元のアーティストを描きこむことなら、誰にでもできるだろう。しかし、実際に何もないところからコミュニティを出現させることは、簡単ではない。現に、人が集う「はずだった」建造物は、日本中にあふれている。

体系化された知恵があるのかどうかを尋ねると、いくつかのポイントを教えていただけた。

「まず、既存のリノベーション事業のおかげで空き物件の紹介を多くいただきます。建物の規模や、ロケーション、価格等の条件を整理して、事業化の可能性を検討していきます。その検討段階においても、地域で活動している方で、今後一緒にやって頂けそうな地域プレイヤーの開拓を並行して行っています。そのエリアを一緒に盛り上げていけそうな人達がいるかどうかは、とても重要な要素であると感じています。」

北島さん自身がプロジェクトマネージャーを務めた一号店HATCHiのケースでいえば、金沢は北島さんの地元だ。北島さんはまず、人づてに人に会い、食事にいったり友好を深めながら熱意を伝え縁を深めた。目的は、プロジェクトの初期段階から地元のキーパーソンでチームを組んでもらい、地域との橋渡し役になってもらうこと。

イベントの様子

HATCHiでは、オープン後の走り出し時、1年で80回以上の交流イベントを開催した。コミュニティの醸成にもホテルとしての差別化にも欠かせない重要な仕事だが、毎週1〜2回というペースで、イベントをまわすのは並大抵のことではない。企画づくりや集客、飲食の提供などの運営において、地元における広く深いネットワークと機動力が不可欠だ。

実現を後押ししたのは、テナントとして入居したコーヒースタンドHUM&Go#と和食ダイニングa.k.a.の事業者をはじめ、ともにHATCHiをつくりあげた総勢17組の地元プレイヤーだった。

「関わる人を増やすと一時的に手間はかかるけれど、作り上げるところを一緒になってやってもうことで、開業してからも自分ごととして捉えてくれる人が増えます。イベントやワークショップを一緒に開催してくれたり、お友達に進めてくれたり。一度は地元を出て海外や東京で活動した経験があるプレイヤーと組みながら立ち上げていくと、多様な人が集まる風通しの良い場が生まれていく傾向があります。」

街のコミュニティを育むホテルは、計画・開発段階ですでにコミュニティをつくりあげていた。

また、「建物の歴史を残すこともポイントです。生まれ変わった場所に久しぶりに来た地元の方が『20年来ていなかったけれど、この地下空間はかつて飲屋街だった』というふうに懐かしみ喜ばれる姿を見ると、面影を残すことがホテルが地元との絆を結ぶ上で大切だと感じます。」と、語るハード面での工夫も盛り上がりに一役買っているようだ。


地域の価値を消費するのではなく育む、新しいホテル像

こうした価値観やあり方は強い共感を呼び、中にはTHE SHARE HOTELSに宿泊し、ここで働きたいと、UターンやIターンしたスタッフもいるという。

THE SAHRE HOTELSは、2020年までに現在の5棟から全国に10棟へと出店を計画している。その先にどんな世界を見ているのだろうか。

未来像のひとつめは、観光ガイドブックでは飽き足らない旅行者を、地域の奥深くへ誘う水先案内人。
「HATCHiの由来は『発地』です。ここでの出会いをきっかけに、北陸の玄関口である金沢から、旅人をディープな北陸へ誘う出発地でありたい。ネーミングには、そんな思いが込められています。旅行者が2泊、3泊と時間をかけて、その地域を深く知りたくなるような場となることを目指しています。そのためのきっかけとして、金沢だけでなく北陸エリアの「ヒト・モノ・コト」に焦点を当てたイベントやワークショップをはじめ、アーティストの工房やアトリエをめぐるツアーを開催しています。」

二つめは、地元で情報を還流させるハブ。
「実際にはじめてみて起きたこととして、イベント参加者の多くが地元の方々であるという事があります。わかりやすい求心力のあるスペースができ、地元にフォーカスしたイベントを行うことで眠っていた『地元を知りたい』気持ちが目覚めたようです。ホテルがシビックプライド(市民の誇り)を醸成していくというのも面白いなと考えています。」

そして、三つめが「HATCHiを利用した人がLYUROやHakoBAを利用してくださるケースが出てきました。今後は、ホテルでのイベントについても、1か所の点に留まらず、拠点を横断した面展開で、地域プレイヤーと別地域との交流が生まれるようなこともやってければと考えています。」と話す、ローカルとローカルを結ぶ結節点だ。

これらの未来像に通底するのは、「地域の価値を切り売りし消費するのではなく、その土地の文化を育む存在でありたい」という思いだ。地域に人を呼ぶのは地域の人々みなで積み重ね育んできた歴史や文化の魅力だが、もっともお金が落ちるのはホテルをはじめとする宿泊施設。THE SHARE HOTELSは、この構図から脱却し、文化拠点やサロンとしての新しいホテル像を描いている。

人が集うところでこそ、文化は生まれ育まれる。首都圏のシェアハウスやコミュニティスペースで培われたリビタのコミュニティデザイン力が、場所とシーンを変えて展開し、もともとあった各地の文化や人の価値とかけ合わさったときにどんな化学反応が生まれるのか。

5つのホテルですでに始まっている波の広がりを、わたしたちは真横に見ることができる。

●株式会社リビタ [ReBITA inc.]

  • 代表取締役 : 都村 智史
  • 所 在 地 : 東京都目黒区三田1-12-23 MT2ビル1F
  • 電 話 : 03-5656-0080 (代表)(平日9:20~18:00)
  • 設 立 : 2005年5月
  • コーポレートサイト
  • THE SHARE HOTELS

取材・文:浅倉彩

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