ローカルの「目的地」となる宿づくり。 「瀬戸内リトリート青凪」に見る地方観光ビジネスへの携わり方。
愛媛県

ローカルの「目的地」となる宿づくり。
「瀬戸内リトリート青凪」に見る地方観光ビジネスへの携わり方。
株式会社 温故知新

2015年12月、愛媛県松山市にオープンしたホテル「瀬戸内リトリート 青凪」(以下、青凪)。緑に囲まれた高台から穏やかな瀬戸内海を望み、個性的な建築の中で、リトリート=隠れ家の名の通り、ゆったりとした贅沢な時間を味わえる。

青凪を運営するのは株式会社 温故知新。宿泊施設のプロデュースや運営、再生プロジェクトなどを通して、地方・地域を活性化することを目的として活動している。同社にとって青凪がコンサルティングから運営まで総合的に手掛けた初めての事例だ。代表である松山知樹さんは、「このホテルがある場所は、車で松山空港から50分、JR松山駅より35分と、都市部からの交通の便は良くないかもしれない。ここでホテルとして成功させるためには、遠くからでも足を運びたくなるようなデスティネーション(目的地)としての価値を持たせること、そして私達の会社が手掛けるメリットを見出すことが重要でした」と話す。

温故知新

2011年設立のホテル旅館の運営受託・プロデュース・コンサルティング会社。 その宿があるからそこに行きたいという「目的地になる宿作り」を通して、地域活性化を目指す。今までに17都道府県におけるプロジェクトを手がける。
コーポレートサイト

土地の目的地となる要素を探す

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青凪のスイート「THE AONAGI」

2011年の東日本大震災の後、社会経済の停滞とともに一時期は訪日外国人の数が減少したことで、宿泊・観光業界の景気は落ち込んだが、翌年からはビザの緩和などの影響などもあり徐々に回復し始め、2020年へ向けたホテル開発が進んだことで活況を見せている。近年は、東京のラグジュアリーホテルや、京都への観光需要だけでなく、地方や小さな街の魅力を生かした個性的なホテルやゲストハウスが各地で生まれ、まさに「目的地」となって地域活性化の核として存在感を示す好例も少なくない。青凪もまた、リトリートとは謳いながらも、その周辺地域とは切り離せない存在となっているようだ。

青凪を語る上でまず外せないのが建築だ。元は大王製紙がゲストハウスとして1998年に建造した宿泊施設で、その一部のみ「エリエール美術館」として一般にも公開されていた建物。設計を手掛けたのは世界的建築家の安藤忠雄だ。大王製紙が一般に向けた施設としてリニューアルオープンすることを決定し、再び安藤忠雄の手によってインテリアが改装設計された。

ホテルの客室は、全7室のオールスイート。シグニチャールームの「THE AONAGI」1室、4ベッドスイート1室、半露天温泉スイート4室、ガーデンスイート1室が設けられている。また、館内には屋内外2つのプール、ジャグジーやサウナがある他、ホテルスパ「ALL THAT SPA SETOUCHI」も用意されている。他方、レストラン「MINAGI」では、愛媛をはじめ四国や瀬戸内エリアの旬の素材を使った和食を提供。空間から食まで、地域の魅力が凝縮されたサービスが展開されている。

「青凪は、安藤忠雄の建築、フルフラット寝湯がある客室、瀬戸内の緑豊かな眺望、地の食材など、ここならではの要素で成り立っています。これはどんな地域にも言えることですが、何も魅力がない土地というのものはないと考えます。絶景がなくとも建築があったり、人が温かかったり、歴史的な文化があったり、きちんと探せば何かある。どうしても見つからなければその土地のオンリーワンとなるユニークな要素を生み出せば良い。私達が手掛けるからには、宿をただ泊まる場所ではなく、『その宿があるからその土地に行く』という存在にしたいのです」

その言葉通り、青凪には首都圏からだけでなくアジアや欧米からの宿泊客も訪れている。

ホテルの採算性とコンサルティング企業としての成長

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青凪からの眺望

青凪の宿泊料金は部屋のタイプにより異なるが、1人あたり5〜6万円程度。料理などは別料金とはいえ、7つの客室による運営で採算は取れるのだろうか。

「元々11室あった客室を、7部屋に減らして改装されています。稼働率は6〜7割程。経営は黒字ですが大きく儲けてはいません。たった7室ですから黒字なだけでも御の字です。青凪は、弊社にとって利益そのものより、実際にラグジュアリーでユニークなホテルを運営しているという実績をうたえることにメリットがあると考えています」

松山さんは、このホテルリニューアルに対するコンサルティングの仕事がきた当初、採算面でのリスクから断るかどうかを迷ったという。しかし同時に、自分たちが運営することによる勝算を見出した。それは、ランニングコストの効率化やホテル単体の売上げではなく、将来的に温故知新という会社が成長していくための一歩になるという見込みであったという。

「これまで、日本全国で多くのホテルのプロデュースやマーケティング支援を行い、成功を収めてきました。しかし、コンサルティングだけをやっているうちは、世間からはコンサルティング会社としてしか見てもらえないと感じていました。言うこととやることは全く別物。自分たち自身でホテルを運営し、実績をつくることで、他のホテルをコンサルティングする時にも信頼感や説得力が増します。また、実際の現場があることでよりリアルなアイデアが生まれたり、会社全体がレベルアップしていくきっかけにもなると考えたのです」

このメディアは「地方創生」を「業界」として定着させ、そこで活躍する人を可視化し応援する為に生まれました。

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