こどもたちにサスティナブルな生き方を伝える 体験型宿泊施設「MORIUMIUS」
宮城県

こどもたちにサスティナブルな生き方を伝える
体験型宿泊施設「MORIUMIUS」
公益社団法人MORIUMIUS

記事のポイント

  • 東日本大震災後、町の高台に残っていた築90年の廃校を改修し、体験型の学びの場へ。
  • こどもたちがサスティナブル(持続可能)な暮らしや生き方を学ぶためのプログラム。
  • 人口が少ない地域にこそ自然という教育資源、観光資源がある。

宮城県・仙台駅から車で90分、太平洋に向かって広がるリアス式海岸に沿って北上していくと、穏やかな湾を望む漁村と小さな山が連なる自然の景色に出会える。2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市雄勝町にある「MORIUMIUS(モリウミアス)」は、新しい学びの場を標榜する体験型宿泊施設だ。2002年に閉校となった旧桑浜小学校を改装してつくられた同施設は、急勾配の高台に位置し、鬱蒼と茂る木々に囲まれた静かな環境に佇む。築94年以上の木造校舎は、各所に手が加えられ、その周りには宿舎や様々な施設が点在する。

かつての学校がこどもたちのための体験型宿泊施設に

同施設の運営を手掛けるのは、公益社団法人MORIUMIUS。2011年に設立された同団体の当初の目的は、被災した雄勝町のこどもたちに向けた給食の提供や、放課後塾を実施するボランティアであった。2013年に、この校舎と出会い、教育の場としての施設づくりがスタート。約3年程の期間を経て、2015年の夏に本格的なこどもたちの受け入れを始めた。

キッチン併設ダイニング、壁にはアーティストの作品が飾られている

施設の建築は、平屋建ての約800㎡の校舎の中と、離れに新築された宿舎、コミュニティースペースがあり、校舎の周りには豚やヤギの小屋、鶏が暮らす堆肥小屋、お手製のバイオジオフィルターを持った小さな水田、露天風呂が展開。校舎内に入ると、レセプションや共用部通路などは壁を取り払った半屋外のような空間で、季節や天候といった周辺の環境の変化を直に感じられる。その他、多くの二段ベッドが並ぶ2つのベッドルーム、キッチン併設のダイニング、多目的なピロティやテラス、工房、ホール、一部2階部分が設けられたラウンジなど、元の間取りを変えながら各居室を設置。部屋の断熱性、大きな開口部や高い天井が宿泊施設としても気持ちの良いつくりだ。廊下では、1日のスケジュールが書かれた黒板、スタッフの自己紹介が貼られた掲示板など、小学校の名残がそこかしこに見られる。

建築の改修にあたり、始めに地元住民やボランティアなどによって校舎に流れ込んだ泥かき、床や壁の撤去を行い、家曳き職人による校舎全体の基礎を修復するジャッキアップなどが行われ、述べ5000人以上が携わった。改装デザインのプランは、隈研吾、手塚貴晴を始めとする建築家と、日本やアメリカの建築学生たちのデザインワークショップを経て計画されたもの。木造建築の開放的な構造と温かみのある質感、随所に見られるこどもたちの工作や、空間に調和する木製家具、そしてそこを走り回るこどもたちの声が、手づくり感のある独特な居心地の良さを生んでいる。

自然と人のつながりの中で生まれるプログラム

この建物と周辺環境を生かして、こどもたちのサステナブルに生きる力を育むプログラムが行われる。プログラムは、週末や連休を中心に開催される1泊2日・2泊3日のMeet MORIUMIUS、はるや夏休みに開催される7泊8日のLive in MORIUMIUS。実施されるプログラムは、森、海、田畑、季節、食などをテーマとしたものだ。木の伐採や植樹による整備、水源探し、薪割りや木工作を通して森や山という資源を知ること。地元漁師の船に乗っての魚介類がどのようにつくられ採られるかを知り、オーガニックで土壌から旬の野菜をつくる田畑での体験。自分で採った食材を料理して生命と自然、作り手に感謝しながら味わうことを通し、自然と人間の関係を見つめていく体験が待っている。その他にも施設内では、食物の一部がヤギや鶏のエサになりフンとなって土に還る仕組みや、割れた瓦を敷き詰めた排水を浄化する水路、そこに自生する植物など、自然と生き物のサイクルが目に見える形で示されている。同団体の理事の1人である油井元太郎さんは、「モリウミアスは、人間の生活を下支えする『サスティナブル(持続可能)』な暮らし、生き方を学ぶ場所となることを目指しています」と話す。

こどもたちが宿泊するベッドルーム

モリウミアスはこどもたちに向けた学びの場であり、こどもだけで宿泊、体験することを目的としている(施設内には大人用の宿舎もあり、一部、企業研修などに向けたプログラムも用意される)。学校団体が生徒の林間学校などで訪れることや、学校の長期休暇中にこどもたちだけが宿泊すること、また海外からも利用者が来る場合もあるという。

「地元のこどもたちには多く来て欲しいです。雄勝小学校のこどもたちは総合学習で月に1回は訪れていますが、同小は生徒が20人程で、震災後にかなり人数が少なくなりました。実際にもっと多くのこどもたちが利用できる環境は整っていますし、国内外から来てもらうことを大事にしています。それは雄勝の環境を羨むのは都市部のこどもであり、大人になっても通い続ける可能性はとても大事だと思っています。」(油井さん)

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